感想を「画面上の事実」と「利用者の行動」に言い換える
デザイン・UXの仕事で求められるのは、飾りのある日本語ではありません。画面のどこで、誰が、どう迷うのかを短く切り分ける言葉です。WebデザイナーやUI/UXデザイナーのレビューでは、「きれい」「分かりにくい」だけでは修正の方向が定まりません。観察した事実と判断の仮説が分かれていれば、日本語が完全でなくても議論に入りやすくなります。
遠慮して「大丈夫です」「問題ないと思います」と返す場面もあります。ただ、デザインレビューでは、その言葉だけで合意したとは限りません。案に賛成なのか、判断材料が足りないのか、優先度が低いのか。そこを言葉にして確かめると、後の手戻りを減らせます。
「見にくい」を修正できる指摘にする
抽象的な形容詞は便利ですが、受け手ごとに意味が変わります。指摘は対象、起きていること、想定する影響の順に置くと伝わりやすくなります。
「この画面、見にくいです」ではなく、「見出しと本文の文字サイズが近いため、初めて見る人は説明文から読んでしまうかもしれません」と言います。「かもしれません」は自信のなさではなく、検証前の仮説だと示す表現です。
レビューでは、次のように言い換えられます。
- 「余白を増やしたほうがいいです」→「このボタンの周囲だけ余白が狭く、押せる範囲が小さく見えます。」
- 「色が弱いです」→「エラー表示が通常の補足文と同じ強さに見えるので、入力を直す場所に気付きにくいです。」
- 「この導線は変です」→「一覧から詳細に入った後、一覧へ戻る操作が画面上部にしかなく、片手では戻りにくそうです。」
口頭なら、「押せる範囲が」「小さく見えます」のように名詞の後で少し区切ると、聞き手も画面を追いやすくなります。
リサーチの発言と自分の解釈を混ぜない
UXリサーチでは、参加者の言葉を要約する場面があります。ただし、「利用者はこの機能を嫌がった」と断定すると、観察と解釈が混ざります。記録を読む人が根拠をたどれる形にします。
参加者が「どこを押せばいいか、ちょっと考えた」と話したなら、「参加者は購入手続きの開始位置を探す間、画面を上下に見直していました。『どこを押せばいいか』という発言もありました」と共有します。その後に、「開始ボタンの名称か配置を検討したいです」と提案を分けます。
会議では、次のようなやり取りになります。
「これは全員に起きたことですか。」
「全員ではありません。複数の参加者で見られましたが、条件の違いはまだ確認中です。」
「では、確定事項ではなく観察結果として資料に残します。」
「全員ではありません」を先に言えると、データを過剰に一般化していないことが伝わります。日本語の精密さは、研究らしい硬い言葉よりも、確実に言える範囲を守るところに出ます。
依頼では「作るもの」より「決めたいこと」を聞く
デザイン依頼では、「バナーをお願いします」「画面を作ってください」と作業物だけが渡されることがあります。このまま着手すると、目的が後から変わりがちです。判断に必要な選択肢を示して聞くと、話を前に進めやすくなります。
「このバナーは、既存利用者への案内と新規獲得のどちらを優先しますか。」
「今回は既存利用者です。」
「承知しました。詳細ページへの遷移より、変更内容を一目で理解してもらう構成で案を出します。」
レビューの終わりも、「この案で進めますか」だけでは終えません。「文言は決まり、アイコンの方向だけ保留という理解で合っていますか」と、決まったことと残ったことを画面の前で確認します。会議を閉じる前にこの一文を置くと、次に誰が何を直すのかが残ります。
